嵐山光三郎先生の「ローカル線温泉旅」にうおやと塩引き鮭が紹介されています。

<塩引き鮭紹介抜粋>

塩引き鮭 ローカル線温泉旅

村上の鮭はしぶとい味


村上の鮭はしぶとい味

新潟から羽越本線鈍行列車に乗って一時間二十分で村上に着く。
特急いなほに乗れば四十五分であるが、鈍行でゆっくりと行くことにした。
村上は小さな城下町で武家屋敷や古い商家があり、
曲りくねった路地には日本海沿いの街道の面影が残る。
皇太子妃雅子さまの故郷でもある。
村上市の北を流れる三面川は、江戸時代より藩による鮭放流がさかんで、
この地の武家の子たちは、鮭で育った「鮭っ子」と呼ばれてきた。
三面川の鮭は北海道の鮭とは味が違う。
ことに塩引きして自然乾燥させた塩引き鮭は、
一度食するや生涯忘れられなくなるしぶとい味である。
日本海を下って三面川へ戻ってくる鮭は、油がぬけて、全身に根性がみなぎるのである。
油が残っていると、きめのこまかい自然燻製の味にならない。
私は三面川の鮭を好み、毎年十一月になるとでかいのを二匹注文する。
一匹は塩引きのままつるし切りにして食し、
一匹は軒下へつるしたままにしておき、自然燻製にいたす。
鮭はタワシで洗い、塩を大量にまぶしてみがき、
四、五日漬けてから一日中水で洗い流して塩分をぬいて干すのである。
つまりは鮭の漬け物だ。
塩加減ひとつによって味が微妙に変る。
干して七日めぐらいの塩鮭を切り身にして炊くと、
こりやもう「オーツ」と溜息が出るほど上等で、
皮がパリッとして香ばしい味である。

 

嵐山光三郎先生のローカル線温泉旅

うおやは「日本一の魚屋」

<越後村上うおや紹介抜粋>
さて、村上へ行ったおりは、吉源とともにどうしても行かなきやいけない店がある。
鮮魚店のうおや(tel0254-52-3056)である。
観光客は鮮魚センターヘ行くけれども、土地の人はうおやで買う。
冬には、鮭のいくらの醤油漬けが出て、こいつがべらぼうに酒にあう。
見ている前で生腹子を醤油に漬けて送ってくれる。塩引き鮭もうおやのがおすすめだ
店に入ったら柳鰈一枚二百円が並んでいた。
栄螺(サザエ)一個百六十円、汐烏賊百五十円、酒びたし一袋三千円、
パイ貝一山二百四十円、あとは塩もずく一山三百円。
泥鯵(ドジョウ)が水槽のなかでピョコタンと泳いでいる。
私は七年前にうおやは「日本一の魚屋」という認定証を進呈し、
その色紙が古くすすけたまま店の奥に飾ってある。
元気のよい上村八惠子カアちやんと握手してから、
近くの瀬波温泉大観荘にむかうこととあいなった。

嵐山光三郎先生

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